会社設立後の簡単な経理知識
- 公開日:2014/11/21
- 最終更新日:2021/02/12
事業を始めると個人事業、法人を問わず必ず帳簿を作成しなければなりません。帳簿と聞くと税金の計算のためと考える人が多いと思いますが、帳簿やそこから作成される損益計算書、貸借対照表などの財務諸表は事業の現状を把握する基礎資料になるものです。
有能な経営者はこれら財務諸表から的確な経営判断をし、営業体制の強化など今後の経営方針の意思決定や金融機関との交渉などに当たります。
財務諸表と聞くとどこかとっつきにくい印象があり、経営者は営業などほかにも業務を抱えている場合が多く、帳簿をつける作業や財務諸表の作成を経理担当や税理士に任せる方が多いようです。
しかし、経営者たる者、財務諸表が物語る数字の意味を読み取れなければ、経営上の素早いジャッジができません。そのためにも経理事務については極力手間や時間をかけずになおかつ正確であることが大事になってきます。いくつかコツを紹介します。
経理事務の役立つポイント
- なるべく現金を置かない。売上金はそのまま口座に預け入れ、毎日の支払いはとりあえず個人で立替処理をし、月末にまとめて精算する。
- 預金口座の数を少なくする。(口座を少なくすることで預金残高が明確になる。預金出納帳の代わりになる)
- 売掛金の回収は集金ではなく振り込みでお願いする。手形は受け取らない。
- 〆日は月末で統一、支払日は月一回と限定し、まとめて支払う。
- 仕入先・取引先には全て振り込みで支払う。
- 給与も振り込みで行う。(社員個人の経費立替もここで精算)
- 定期的に支払うものは自動引落しを利用する。
- 領収書の整理、ファイリングに時間をかけない。
- インターネットバンキングを利用する。
- パソコンの会計ソフトを効率的に活用する。(初期設定が重要)
創業初期の頃は仕入先など現金取引を求めてくるところも多いことが予想されますが、信用を積み重ねることで掛による仕入なども可能となってきます。
インターネットバンキングの利用
ネットバンキングとは銀行との取引をインターネット上で行うことをいいます。最大のメリットは窓口やATMまで行かなくても取引ができるので時間と手間が省ける点です。通帳記帳に行く時間がない時などパソコンで、いつでも残高や入・出金明細の照会ができるので、月末等の繁忙期などは、とても助かります。
また振込手数料が窓口よりも割安な点もメリットの一つです。
銀行により違いがありますが、インターネットで利用できる主な取引には次のものがあります。
- 残高照会
- 入出金明細の照会
- 振込
- 振替
- 定期預金の預入や解約
- 外貨預金の預入や解約
- 投資信託の購入や解約
口座にお金があれば、現金の入金と出金以外はインターネット取引専用のサイトから入力することでさまざまな取引ができて便利です。ただしネットバンキングは、メリットばかりあるわけではではありません。多くの人が不安に感じるのはセキュリティ面です。各銀行ではセキュリティ対策を強化していますが、自分自身でもしっかり注意して、ネットバンキングを使いこなしましょう。
パソコンに最新のセキュリティ対策ソフトを使用するのはもちろんのこと、不審な電子メールのリンクを開かない、必ず公式サイトからログインする、前回のログイン日時や取引の内容を確認する、パスワードを生年月日など推測されやすい番号にしないなど、他人に知られないようにするといった基本的な注意を徹底することが重要です。また、ネットバンキングでは、安全な取引のために、本人確認用のIDやパスワードを設定して利用します。
このIDやパスワードを忘れてしまうと、本人でもログインできず、取引ができなくなってしまいます。ネットバンキング用の口座を開くときには、IDやパスワードを忘れないようにするのはもちろんですが、手帳などにメモしておく場合など、他人にそれと分からないようにすることも大切です。
まずはメインバンクとして使っている銀行でネットバンキングを始めると、ATMや窓口も併用できるので、ネットでログインできない事態になっても慌てずに済みます。
パソコン会計の利用
経理といえば、帳簿の記帳を思い浮かべる人も多いでしょう。簿記の知識がないと難しかった帳簿の作成ですが、現在は会計ソフトの普及によりパソコンを使用して比較的簡単に作成でき、必ずしも簿記の知識が必要ではなくなりました。
ソフトの値段も下がり、高機能化されているので、ソフト購入の際には単機能のものではなく、経営分析やキャッシュフロー計算などの機能が付いているソフトを選択することをお勧めします。単機能のものより高価ですが、経理関係の業務をほぼカバーしてくれます。
会計ソフトを使用するにあたって一番大変で重要なのが導入のときの初期設定です。会計ソフト導入のメリットのひとつにリアルタイムな損益の把握がありますが、初期設定が間違っていると、リアルタイムに確認できるのは事実と違う数字ということになり意味がありません。
どの会計ソフトでも導入時に設定すべき項目は変わりませんが、会計の仕組みを理解していなければ戸惑ってしまい、初期設定すら嫌になってしまうものです。各メーカーも簡単に設定できるように工夫していますが、専門家に設定を代行してもらうのが確実です。
また、パソコンを使用する際に注意が必要なのが、データの管理です。故障などが原因で今までの入力データが損なわれてしまうといったことを防止するためにCD-ROMなどの媒体に定期的にバックアップをとることが重要です。
電子申告・納税システムの利用
事務の効率化を考える上で、手続きの電子化がこれからの時代に欠かせなくなることが予想されます。確定申告や各種申請など、インターネットを利用して行なうもので国税庁が運営しているのが、「国税電子申告・納税システム」(e-Tax)というシステムです。
税務署に出向いて申告する手間が省けるので業務の効率アップが期待できますが、ネット上での本人確認に必要な環境を整える必要があります。
なお、ダイレクト納付を利用して、届出をした預貯金口座から振替により納付することもできますので、地方税のeLTAXと共に利用すれば、税金の申告・受付確認・納付と一連の作業をパソコンの操作のみで完結することができ、忙しい経営者にとってとても便利な仕組みといえます。また、納税証明書の交付請求をe-Taxで行なうと手数料がお得になります。
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