役員報酬の決め方と役員報酬の変更(減額)の方法
- 公開日:2015/02/18
- 最終更新日:2021/02/12
会社(法人)と、個人事業主との違いの一つに、経営者の報酬の形態があります。個人事業主は、利益(従業員の給与や経費を除いたもの)が報酬となるのに対し、法人の場合、経営者も役員報酬として会社から報酬を受け取ります。そして、この役員報酬は、社長だけでなく、他の取締役、監査役などの報酬も金額を最初に決めておく必要があります。
その金額の決め方ですが、もともと個人事業主の方が法人化したのであれば初年度の売上の予測もたつでしょうが、会社を設立したばかりの方だと、最初はいくら儲かるかわかりませんし、一体いくらにすればいいの?と疑問に思われるのではないでしょうか。
基本的に、役員報酬の額は事業の大小に関わらず自由に決めることができます。ただし、収益の見込みがはっきりしない状態で「よし!役員報酬は毎月200万だ!」と当てずっぽうに決めてしまうと、後で大変なことになります。
何故なら、役員報酬を不用意に減額したりすると、費用が減っているのに税金は増えてしまう場合があるので、適正な金額を出来るだけ予測して決定することがとても重要です。
役員報酬の決め方
「じゃあ、どうやって決めるの?」ですが、明確な基準はありません。適正な報酬の決め方は、まずいくら必要かと、その必要額を稼ぐためにいくら売ればいいかを把握することです。
このように書いてしまいますと、前途ブログに述べた「事業計画の立て方」のようですが、まさに事業計画を緻密に作成し、その実行予測から、最終的に「よし!この金額でいこう」と決定することが重要です。
適切な役員報酬を決定するには、月々の売上がどのくらいになるか、粗利益率は何%なのか、また固定費がどのくらいかかるのかを見積った上で決める必要があります。単純に直近1ヶ月間の売上だけで決定したり、この業界のこの程度の規模ならこれぐらいの金額で、というような大雑把な見積で決めては、非常に危険です。
次に、変更の仕方についてご説明したいと思います。こちらを読まれると、「えいや!」で決めると後で大変ということを、ご納得していただけるかと思います。
役員報酬の変更(減額)の方法
いざ事業の運営を始めると、思ったように売上が上がらず(もしくは思った以上に売上が上がり)、役員報酬の改定(増額または減額)をする可能性があると思います。しかし、改定の仕方によっては、税務上、その一部が経費(税務上「損金」といいます)として認められない場合があり、結果として税金が増える場合があるので、注意が必要です。
「定期同額給与」の要件
法人税法では、役員報酬や役員賞与を「役員給与」といいますが、役員給与を毎月一定額を支給する場合、次の要件を満たせば、「定期同額給与」として損金算入が可能になります。(税務署への届出等は不要です。)
①その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである
②その事業年度の各支給時期における支給額が同額である
この要件を満たさずに、事業年度の途中で役員給与を増額したり減額したりすると、税務署がその増額分を損金(経費)として認めなかったり、減額後の給与と減額前の給与の差額分を損金(経費)として認めなかったりして、その分が会社の利益として課税される可能性が出てきます。
会社としては、役員への報酬も払う、税金も払うで、出費が余計にかさむことになってしまいます。
損金として算入できる改定の方法
では、きちんと損金(経費)として認められる改定の仕方について見ていきたいと思います。
1.定時株主総会での役員報酬の改定
決算終了後の定時株主総会など、毎年所定の時期に行われる改定(通常改定)で、次の要件を満たす場合は、定期同額給与とみなされ、全額を損金にすることができます。
- 通常改定で定期同額給与とみなされる要件
・期首から原則3ヶ月以内(12月決算法人なら3月末まで)に行う改定であること
・事業年度内において、改定前(後)の毎月の支給額が同額であること
※株主総会での決議内容を記した議事録を作成し、きちんと保管しておきましょう。
2.業績悪化を理由に役員報酬を減額する場合
役員給与の減額が認められるのは、「経営状況の著しい悪化等にともなうやむを得ないものである場合」とされています。具体的には、下記のような状態が認められる理由になります。
- やむをえず定期同額給与の減額が認められる理由
・決算書の数値が相当程度に悪化した。
・倒産の危機に瀕している。
・経営悪化により、株主、債権者、取引先等との関係上、役員報酬を減額しなければならなくなった。
具体的にはこのような場合が例に挙げられます。
・取引銀行との間で、借入金返済の延長や条件緩和をするための措置として、役員報酬を減額しなければならなくなった。
・業績や財務状況、資金繰りが悪化したことから、取引先等からの信用を維持・確保するために、役員報酬の減額を盛り込んだ内容の経営改善計画を策定した。
まとめ
いずれにしろ、役員報酬を「なぜ減額する必要があるのか」「減額するとどのような効果があるのか」を、客観的、かつ具体的に説明する必要があります(取締役会議事録などで事実を残しておく)。ただ単に、社内的に「これじゃあ役員給与払えないわ。。。」と自己判断しただけでは、理由と認められません。
※他、損金算入(経費として認められる)役員給与には、他にも、事前確定届出給与(税務署に届け出ることで、月々の報酬とは別に所定の時期に確定額を支給する)などがあります。
※役員給与の改定については弊社HPにも詳しく記載してあります。
「役員報酬(定期同額給与)の支給額を 改定する際の注意点」
このように、役員報酬の金額は、変更が非常に大変なだけでなく、事業運営(資金計画)にも影響を及ぼす事柄なので、慎重に決めましょう!
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